オールドファッションカップケーキ

キャスト

【攻・外川】阿座上洋平×興津和幸【受・野末】
【柿谷】高橋伸也
【中村】蟹江俊介
【桐島】李知恵
【河野】松嶌杏実　ほか

スタッフ

原作：佐岸左岸
脚本：フィフスアベニュー
イラスト：佐岸左岸

発売日：2020年08月26日
収録時間： 76分＋68分　(2枚組)
発売元：フィフスアベニュー

「好きです。野末さんが好きです。死ぬほど。」
アラサー番犬部下×アラフォー愛され上司

寝て、起きて、仕事をする―――それだけの毎日、
それだけを好きで選んでいる自分に最近少し憂鬱な39歳・野末。
ちょっと無愛想だけど信頼の厚い部下29歳・外川は、そんな野末が気になる。
ひょんなことから、女子で賑わうパンケーキのお店に2人で行くことに。
ここから、外川による野末のためのアンチエイジング大作戦が始まった。
休日まで野末のために時間を割く外川に「なぜ？」が募っていく野末だが…！？

2度目の成人を控えて臆病になった大人の恋のお話を
2枚組み仕様でドラマCD化！

オールドファッションカップケーキ

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シリーズ

オールドファッションカップケーキ
オールドファッションカップケーキ with カプチーノ

レビュー

オールドファッションカップケーキは佐岸左岸さん元作のマンガで、上司と部下の恋愛をね、すごくリアルに描いてるとっても良質な大人向けのBLです。
BLCDでは上司の野末さんを興津和幸さんが、部下の外川くんを阿座上洋平さんが演じています。

「オールドファッションカップケーキ」のCD自体は2020年8月に発売されていて、withカプチーノが2021年の12月に発売されています。

で、なんで今このタイミングでレビューするかっていうと、この間、興津さんと阿座上さんが共演している「ヒーリングパラドックス」を聞いたのね。これがとってもよくって、「そういえばこのお二人、『オールドファッションカップケーキ』でも共演されていたよな」と思い出して、聞いてみたわけです。

で、この作品、BLアワードを受賞している作品でもあるのですが、もうほんっとに良い。私は原作のファンでもあるんだけど、CDもね。本当に良かった。CDになったことで原作の良さが倍増された感じ。あれだな。私の読解力では読み取れなかった原作の良さが、CDになったことでちゃんと伝わったと言えばいいのかな。
原作もそうなんだけど、CDもね、1回聞いて終わりにするのは本当にもったいない、何回も聞き返すことでそのたびに新たな発見とか気づきがある作品です。

ストーリーを簡単に説明するとね、主人公の野末さんは39歳。仕事はできるんだけど出世欲はなくて、同じことの繰り返しになってしまっている毎日に飽きを感じ始めてる会社員なのね。で。その野末さんの部下が30歳の外川くん。外川くんは不愛想だけど仕事が出来て気も利いて、で、だいたいの人が「イケメンだ」と思うくらいにイケメンなのね。
で、仕事で一緒にお客さんのところに行く時の会話がきっかけで、アラフォーの野末さんのアンチエイジングのために、二人で「女の子ごっこ」をすることになる……っていう話です。

女の子ごっこって何！？ってなると思うんだけど、まあ、女の子たちがするようなことをしてみようっていう外川くん考案のアンチエイジングで、男二人でパンケーキ食べにいったり、スイーツの写真撮ったり、そういうことね。男性だとやらないけど女の子ならやるよねってことをやってみる、っていう「ごっこ」なの。

この女の子ごっこのために休日も二人で会うようになって、それまでも仲の良い上司と部下だったけど、急に距離が縮まって……という展開なのね。

まずこの作品ね、最初原作を読んだときは、主人公の野末さんってもっと線が細い感じかと思ったの。でキャストを見て「興津さんなんだ？」ってちょっとびっくりしたんだけど、聞いてみたらこれが正解。40歳間近のちょっと疲れた会社員、でもすごく人当たりが良くて周囲の人から愛されてるってキャラをとても温かみにあふれる感じで演じられていて「あ、確かにこれだ、野末さんはこれだ！」って思いました。へへって笑う感じとか、「はいはい」って返すところとか、本当に柔らかくてかわいくて、そう、かわいいの！！ちゃんとアラフォーの中年男性なんだけど、めちゃくちゃかわいいの。年齢とか立場とかの外枠を保ったまま、キャラクターをこんなにかわいらしく演じてくださるって……さすが興津さんって思った。

部下の外川くんもね、阿座上さんが「ちょっと不愛想な感じ」を本当にちょうどよく、淡々と表現されていて、でもそのあまり感情を表に出さない中にもね、ある、ちょっとした心の揺れを本当に絶妙に出してくるの。声の質とか高さもまさに外川くんそのままで、耳にすごく気持ちよかった！
で外川くんもね、カプチーノになったときには、二人の関係性が変わってるんだけど、だから声のトーンが少し違っててね、それがもう本当にかわいい。そんな外川くんを見て野末さんが「かわいい」って思うんだけど、その野末さんの「かわいい」に全力でうなずきながら聞いちゃうの。
このお二人をキャスティングした方、凄い…。スゴイ、見抜いてる。ドンピシャ。ドンピシャ以上でした。

私はBL全般で、普通の友達や上司と部下っていう関係から始まってさ、なんか互いに意識し合うようになって、すごい絶妙なバランスでそれまでの関係を保ってたのに、それが崩れる瞬間とか、崩れそうになる瞬間がすごく好きなんだけど、それがいくつもあるのが「オールドファッションカップケーキ」でした。その危うさの裏に「崩してしまえ」みたいな覚悟？みたいなものも感じられて、それがとっても良かったなと思う。

「オールドファッションカップケーキ」に続編の「withカプチーノ」があるってことは、1作目で無事くっついて、くっついたその後の二人の姿読めるってことなんだけどね、この1作目から2作目への変化もすっごい良かった！！

「withカプチーノ」はさ、何気ない日常の会話の積み重ねがすごく幸せなのね。で、「オールドファッション」からこんな風に毎日の会話をするようになったんだっていう変化がめちゃくちゃ尊いの。
でも、関係が進化したからこその悩みをすごく丁寧に、そしてリアルに描いていて「こういうのを聞きたかったの……」って思いました。

この作品、セリフの一つひとつがとても深くて、原作読んだ時も「いいなあ」って思って何度も読み返したんだけど、音声になるとさらに良くてね、キャラが置かれている状況とかこれから起こることにも当てはまるし、自分自身にも当てはまることが多いのね。そういうことを考えながら聞くと、ほんと1回じゃ全然足りなくて、何回も繰り返し聞けちゃうの。

主人公二人もいいんだけど、主人公周りの人たちもすごく良くて、キャラもいいし、演技もね、とても落ち着いていて深みがあって、すっごい聞いちゃうし聞いていてきもちいいです。BLに女性キャラ出てくるの好きじゃないって人、けっこういると思うんだけど、この作品は別。女性キャラがとても良かった。野末さんの同期で上司で、でも友達でもある桐島さんとか部下の河野さんとか、最後に出てくる器屋のおばあちゃんもすっごく良くって、「みんな大好き」って思いながら聞いた。器屋の、あのおばあちゃんがお話をすごくきれいに包んでくれた感がありました。あのおばあちゃんみたいな人になりたいなあって思います。柿谷さんとか中村君もすごく立体感あって良かったな。すごくいい役者さんが集まった作品だなと思います。

最近のBLはすっごく絡みが濃厚で回数が多いものとか、奔放なキャラだったりっていうものも多いんだけど、この作品に関してはぜんぜんそういうことはなくてとてもまじめで、良識のある大人しか出てきません。なので、絡みはすごく少なくて、あっさりしてます。でも全然気にならない！それ以外の部分がすごく充実してるから。BLなので「恋愛」がテーマではるんだけど、でもこの作品を聞いてね、恋愛って自分とも向き合うことなんだなあと改めて気づかされました。自分とちゃんと向き合った先に、初めて相手ともちゃんと向き合って関係を作っていけるのかなって。特にwithカプチーノはそういう話よね。

本当にね、すごくすごくいい物語なので、これはぜひ2作続けて聞いてほしい。CD全4枚なのでちょっと大変だけど、ほんと聞く価値ある作品です。
質の高い作品に出会えた時って、本当に幸せ。幸せをいっぱいくれて、ありがとう～！