よろめき番長 レビュー

キャスト

【攻・吉川諒】三浦祥朗×鈴木千尋【受・若葉真平】
【鳴海】前野智昭

いろいろ展開がおかしい、けどそこがいい、よろめき番長

発売されたのが2012年と、少し古い作品ですが、まごうことなき名作。
依田沙江美原作のコミックスをCD化した作品です。

主人公の若葉真平はお茶屋「春馬園」で働く30歳。
たおやかな外見と柔らかい物腰に反し、実は潔癖症で人付き合いが苦手、友達はたった一人。そのため言動がいろいろおかしい「不思議ちゃん」
そんな彼が、店の前を掃除しているところに、自転車で突っ込んできたのが編集者の吉川。
吉川は自転車に気付かず掃除を続ける若葉をよけようとしてガードレールに激突、そのまま車道に投げ出され……というところから物語が始まります。

一般的なBLなら、ここで「運命!」みたいにお互いの間にキラキラしたものが散ったり、「ふざけんなよてめぇ」みたいにバトルが始まったり、はたまた驚く初心な受けに大人な攻めが「大丈夫だから……」なんて紳士的に印象付けたりするのだけれど、よろめき番長は違います。

事故を目撃していた商店街のマダムたちに「若葉ちゃん、この人病院に連れて行ってあげなさいよ」と言われ、「面倒」だと思ったのが顔に出て、それを吉川に目撃される……

という、BLにはまずありえない、でもリアルで考えると「分かる!」という展開!

そんな、現実的に考えたら「ちょっと冷たすぎるんじゃないの?」と引くような態度を取られる吉川ですが、若葉がいれてくれたお茶がおいしくて、そして若葉のことも気になっちゃって……

2人の関係が始まっていきます。

若葉を演じる鈴木千尋が……最高♡

こんな若葉を演じるのが、BLCD界では健気で儚い受けを演じさせたら右に出るものはいない、鈴木千尋。

人と関わる方法が分からない故に深く関わることを避けている若葉をとてもリアルに演じています。そしてそういう人物だから持っている「自分の世界」もよく表現していると思うのです。

例えば、若葉の楽しみのひとつは、ランチに商店街の中華料理店で、黒酢タレの冷やし中華を食べること。いつもは1人でランチにでかける若葉ですが、あるとき吉川と一緒に中華料理店に行くことに。

そのときに若葉は、目の前で話し続ける吉川を完全に無視して、冷やし中華を味わうことに夢中になっています。
「麺と具を最後までバランスよく……おいしい」「タレが服にはねないように……おいしい」
という心の声が、めちゃくちゃカワイイ!

夏になると、この若葉を思い出して、冷やし中華を食べたくなっちゃうくらい、印象的なカワイイ場面なのです。

そんな若葉は、吉川に強気に迫られるとどうしていいか分からなくなってパニックに陥ります。パニックに陥ったときの必死なもの言いは、さすが鈴木千尋!と言いたくなる儚さと可愛さ、そして必死感がたまりません。

若葉を受け止めようと努力する吉川の青さがいい

若葉に恋をして一生懸命振り向いてもらおうとする吉川を演じるのが、三浦祥朗。若葉の7歳年下という設定で、まだ大学を出て2年足らずという青年。

吉川の気持を見抜いた若葉の友人・鳴海の策略にハマり、若葉に強引に迫って関係を結んでしまうのですが、そこから若葉の潔癖症に気づき、若葉を受け入れよう、受け止めようと自分なりに努力していくところも、またおいしいです。

とはいっても、若さゆえに強い言葉を言ってしまって若葉を怯えさせたり、抑えがきかなくなる場面もあったりするのですが、それをじゅうぶんカバーできる「年下力」を三浦祥朗が好演しています。

若葉のたった一人の友人・鳴海を演じる前野智昭もすごく良いバランスで絡んでいて、けして単調にならず、いいスパイスになっています。

BLCDって、一度聴いたら満足してリピすることはないのですが、「よろめき番長」だけは何度もリピして聞いてしまいます。
いつでも安心して聞けるかわいいラブコメです。
(ライター 矢吹 良子)

CD詳細→よろめき番長


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