BLの王道は、皆が納得する大団円のハッピーエンドだけど、強い印象を残すのは、バッドエンドとか「これってハッピーエンドなの?」って疑問を残すメリーバッドエンド、メリバだったりします。
というわけで、ハッピーエンドと言っていいのか迷う、メリバBLCD、メリバ寄りのBLCDを紹介します!
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メリバBLといえば、はらだ先生
まず、メリバBLCDといえば、はらだ先生原作の作品!
はらだ先生って、えぐるようなストーリーのマンガを描かれる方で「よるとあさの歌」もだいぶ衝撃だったんですけど、あれはハッピーエンドだったと思うんですよね。
はらだ先生のメリバBLでCD化されている作品と言えば、まずこれ。
にいちゃん
にいちゃんは完全なメリバというより、「メリバかな?」という余韻も感じる作品なんですけど、CDの最後のトラックがね、だいぶ不穏で、非常に良かったです。
これ、主人公は2人。斉藤壮馬さん演じる「ゆい」と、加藤将之さんが演じる「にいちゃん」です。
ゆいは小学生のころ、近所で1人暮らしをしている年上の男性と仲良くなるのね、で、彼を「にいちゃん」と呼んでなついてるの。で、放課後はにいちゃんの家に行ってゲームをして遊ぶのが日課になってるんだけど、にいちゃんはゆいの体に触れたり、キスをしたりしてくるわけですね。で、ゆいもそれが別に嫌じゃなかった。
でもある日、「セックスしよう」という話になって、いざにいちゃんの体を見た時、ゆいは怖くなって泣きながら逃げ出してしまうわけです。で、ゆいとにいちゃんがしようとしていたことがゆいの両親にバレて大騒ぎになって、にいちゃんは姿を消してしまうんですね。
けどゆいは、実は自分が最後までせずに逃げ出したことをずっと後悔していて、にいちゃんを探し続けるの。
で、ゆいが高校生になったある日、偶然にいちゃんをみつけて、にいちゃんとこんどは本当に関係を持つようになる……って話なんです。
これね、最初はゆいがすごい罪悪感を持っていて、にいちゃんにだいぶ、変態的なね、要求をされるんだけど、それを拒否せずに全部受け入れるんですよ。ところが、ある出来事があって、ゆいとにいちゃんの関係性が逆転するというストーリーで、聞いてて
「えっ、そう来るの!?」
という、ジェットコースーター的展開があります!
というわけで、これ、BLの中でも珍しいリバです!
斉藤壮馬さんの色気滴る受けと、不慣れながらもけんめいにいちゃんを愛そうとする攻めが両方聞けてしまうという、大変オトクな作品です。
加藤将之さんはベテランの声優さんなんですけど、なんとこの作品が初BLだそうなんですよ。なんだけどね、加藤さん、実は裏名義で女性向けの年齢指定作品にたくさん出演されている方なので、加藤さん演じるにいちゃんの攻めがね、ヤバいです。
受けはちょっと不慣れな感じがありますけど、それもリアリティあるなと思いました。
物語中盤の、にいちゃんの攻め、ちょっとサイコ的な感じもあって、そのにいちゃんのあやうい感じと、ゆいの色気が半端なくてね、「これは絶品の濡れ場……!!!」と興奮しました。
濡れ場も良かったんだけど、注目すべきは、ゆいとにいちゃんの、内面と関係性の変化。
中盤過ぎたあたりで、ゆいとにいちゃんのキャラクターというか、生きる姿勢が180度変わるんですけど、これがすごく面白かった。「あれがこうなるの!?」という感じで。
で、一見ハッピーエンドと思いきや、生きる姿勢が変わったことでそうとも言えない、というか、この後にね、また何か事件が起こることを予想させるような、そういうエンディングになっています。「続きないの!?」って思わせてくれる、そういう意味でも聞きごたえあるCDです。
これ、巻末のキャストトークで、斉藤さんも加藤さんも「面白かった!」って言ってて「お金貰ってこんなに面白い体験させてもらっていいの」と思いながら演じていたそうなので、役者さんがそういう気持ちで演じられた作品が聞けるというのも、リスナーとしては大変うれしいです。
メリバなんだけど、物語としてはほんと面白くて、役者さんの演技もとても良いいです。
だけど!!!
ひとつ注意があって、子供時代のゆいを演じているのが女性です。なので、子供時代のゆいの絡みとか、ゆいが一人でしてる場面もあるので、それに抵抗を感じる人もいるかもしれません。けどそれを除いても、聞いて損はない作品だなと思います。
カラーレシピ
で、もう1つ。はらだ先生、メリバとくれば紹介しないわけがない「カラーレシピ」。これもとーっても良かったです!!!
カラーレシピはガチでメリバ。超メリバ。聞き終わって「ヤバい……」って思わずつぶやいたくらいメリバです。
メリバの中のメリバを求める人は、「カラーレシピ」。
カラーレシピは美容師同士のBLなのね。腕は確かなんだけど愛想がなくてお喋りが苦手な美容師の笑吉を内田雄馬さんが、接客が得意で指名客もいっぱいいる人気美容師の福介を興津和幸さんが演じてます。
この2人、最初はすっごく仲が悪くて、というか笑吉が福介を嫌っているんだけど、屈託なく笑吉に接する福介にだんだん笑吉が心を許していって……というところに、事件が起こるんですね。
これ以上言うとネタバレになっちゃうんですけど、福介がヤバい。とにかくヤバい。この福介を演じた興津さんすごい、という作品です。
絡みは少な目で、甘くありませんが、ストーリーがすごい。
カラーレシピは、1と2があって、1だけでも一応完結はしてるんですけど、ぜひ2まで聞いてほしいです。
2でヤバさ爆発、特に2の最後のトラックは震えます。
これはメリバの中のメリバ。キングオブメリバです。
ネタバレになっちゃうんでほんと、あんまりここでは語れないのが残念なんだけど、「ガチのメリバ」「メリバのお手本」みたいな作品を探している人には、間違いなく刺さります。
あと、これ、村瀬歩さん、山中真尋さん、千葉進歩さん、廣瀬大介さんも出演されてるんですけど、彼らもね、すごく良いです。全編通して満足できる作品でした。
泥中の蓮
「泥中の蓮」は兄弟BLもので、兄を増田俊樹さんが、弟を小林裕介さんが演じてます。
2人は両親を早くに亡くして、兄の元春は生活のために体を売ってるのね。でそれは弟のアキオも知っているっていう、しょっぱなから泥沼設定なんだけど、兄の元春は弟のアキオを可愛がってて大事にしてて、アキオも実は元春に強い執着を持っている……っていう話なのね。
これも2人のパワーバランスが何度も入れ替わるんだけどが、最後のトラックで「そうだったのか……」っていう秘密が明かされて、「これ、メリバだった」……っていう作品です。
これ、増田さん演じる元春がほんとクズで、しょうがない男なのね、でもね、けっこうかわいいなとも思えるところもあって、ヒモ向きのキャラってこういうのかーって妙に納得しました。で、あと絡み多いです。複数とかあります。
ただ、メリバ的展開的には「カラーレシピ」とけっこう似ているので、聞く順番としては、「泥中の蓮」を聞いてから「カラーレシピ」を聞くとより、両方楽しめるかなと思います。
心中するまで、待っててね
あとはね、メリバなんだけどけっこうハッピーエンド寄りなのかなと思ったのが「心中するまで、待っててね」。
これは人のいい愛されキャラの主人公・福太が一人暮らしをしているアパートに、子どもの頃仲良しだった「葵兄ちゃん」が会いにくるという話なのですが、なぜか社会人になっているはずの葵兄ちゃんは体が小さく、子供になってしまっていて…という、ちょっとファンタジーっぽいストーリーです。
で、まあ勘のいいひとならある程度予想できる展開なんですけど、その「こういうことでしょ」を超えて来る「えっ、そうなったの!?」っていうエンディングが待ってます。
誰もが予想する「こういう終わりだろうな」じゃない、福太的にはハッピーエンドなんだろうけど、メリバだよな……っていうストーリーでした。前半のほのぼの感が後半に向かうにつれ、真っ黒に塗りつぶされていく感じがすごかったです。
この作品ね、福太と葵にいちゃんの出会いとか、2人が故郷の街で繰り広げたエピソードなんかもすごく丁寧に描写してて、そこも良かった。子供時代の福太は伊東健人さんじゃなくて女性の声優さんなんだけど、すごく福太らしくてかわいいです。子ども時代のストーリーものね、かわいくて微笑ましいのに、痛いところがいっぱいあって、ほのぼのからの差がすごい。
でもね、メリバだけどそんなに後味悪くなかったので、「メリバと言われる作品はきいたことがないけどメリバ聞いてみたい」というメリバ初心者は「心中するまで待っててね」から聞いてみるといいのかなと思います。
蟷螂の檻
あとね、彩景でりこ先生の「蟷螂の檻」という昭和レトロなBLCDもあって、これもジャンル的にはメリバなんだと思うんですけど、終わり方がだいぶ中途半端なのね。
「蟷螂の檻1」になってるので「2」がそのうち出る予定なんじゃないかと思うんですけど、「1」だけだと、メリバです。
主従メリバで、雰囲気はすごく暗くて昭和の暗さがあります。そういうのが好きな人はぜひ。
ボーダー・ライン
最後に紹介したいのが、私が数あるBLの中でもトップクラスに名作だと思ってる、ハッピーエンドとは言えないBLCD「ボーダー・ライン」。
これ、かなり古い作品(2005年)で、メーカーが倒産しているのでもう中古でしか手に入らないんだけど、ホント名作。
全部聞き終わったあと、もう1回最初から聞いちゃいます。
久能千秋さんの小説が原作の刑事ものミステリーなのね。この時期のBLは職業モノが多くて、しかもかなりしっかりディティールが描写されていて説得力ある作品ばっかりだったので、普通に読み物としても、何を読んでもおもしろかったって印象があるのね。
ボーダーラインもそういう話で、しかもキャストが三木眞一郎さんと鳥海浩輔さんというね、なので、そういう意味でも間違いないBLです。
刑事の真行寺はある日、交差点の向こう側にやたら派手なかっこうをした男を見つけるんだけど、その男から声をかけられるんです。この男が弁護士の由利で、真行寺はなぜか由利にすごく気に入られてしまって、口説かれて、デートに誘われるんですね。
で、そんな中、真行寺はかつての同僚、だから、元刑事の久保田に会うの。で、久保田から「話したいことがある」と言われるんだけれど、それを聞く前に、久保田が殺人をして自殺をしてしまった……という話で、久保田の死が納得いかない真行寺は一人で事件を調べ始めるのね。
これ、3枚組というか、ボーダーライン1,2,3とCDが3枚、1カ月おきに発売されててて、3枚聞かないと分からないんだけど、ハッピーエンド……とは言えないです。
ハッピーエンドを予感させなくもない……けど、どうなる?という、読者?リスナーに、想像の余地をたっぷり残してくれる終わり方になっていて、そういう意味で聞きごたえがあって、「すごいな」と思ったBLCDなの。
これね、絡みもそれなりに多いんだけど、私が一番興奮したのが、絡みとも言えない絡みで、由利の言葉攻めっていうのかな。
バーで由利が自分の妄想を真行寺に語る場面があるのね。で、これがさすが三木さんで、淡々と静かに語っているだけなのにめちゃくちゃ色気があって、怪しくて、映像として想像させてくれるんですよ!
「え、これ、なに、話してるだけなのに、絡みよりエロい!!」という、すごい……場面があります。ボーダーライン1の最後のほうです。
由利のスゴイ語りを聞かされてしまった真行寺もなんか興奮してしまうという、「わかるわ、そりゃそうなるだろ」というね、ベテラン声優さんの演技をたっぷり楽しめる作品でした。
構成とかBGMとかね、古さはあるんだけど、それでもね、今聞いても聞きごたえある作品だと思います。
ハッピーエンドとは言えない、聞きどころ多い、声優さんの演技がいい、耳が幸せ、何度聞いても飽きない、むしろ何度も聞きたい、という意味で、これはね、ぜひ中古を手に入れて聞いてほしいなと思います。
1だけじゃなくて、2と3も聞いてね。3まで聴いてはじめて、1の意味が10倍くらいになります。
めっちゃおすすめのBLCDです。
おすすめ、聞く順番
今日紹介したなかで、おすすめの聞く順番はね、
- 心中するまで待っててね
- 泥中の蓮
- にいちゃん
- ボーダーライン
- カラーレシピ
かな。蟷螂の檻は、好きなところに挟んでみてください。一つだけ、いろんな意味で異色だからね。
というわけで
ありがとうございました。
Audibleは初月無料★★★
メリバ見たことなかったけどすごく興味あったので見てみます