明け方に止む雨
繊細な心の動きが感じ取れる宝珠の2編
「明け方に止む雨」は草間さかえさん原作のコミックスを音声化した作品。
裁判所事務官の山田と隣人の高天、そして刑事の結城と山田の同僚である里村、二組の恋物語が2つの短編ストーリーで綴られています。
どちらもそれぞれ別々のカラーを持つストーリーなのですが、私のおすすめは断然、山田と高天の物語「夜更けに花降る」。
大人向けの良質な小品BL「夜更けに花降る」
ある日、山田は自宅マンションのベランダに置いていたバラの鉢植えから伸びた弦が、隣に入り込んでいることに気づきます。偶然そのとき、隣人もベランダに出ていたことから「すみません、バラが……」という具合で話を始める2人。
そのとき、とても珍しいニオイのするタバコを高天が吸っていることに気づきます。
山田は高天のタバコが大麻なのではないかと勘繰り、なんとか高天のタバコの吸い殻を手に入れられないかと、高天の家に入り込むのですが……という物語。
とても淡々と語る高天と山田。
そのうち、高天が山田に対して恋心を抱いていることを告げ、山田もその高天を受け入れてしまいます。
大きなドラマがあるわけでもなく、濃厚なエロがあるわけでもないのですが、山田役の阿部敦さんと、高天役の新垣樽助さん、2人の声の相性の良さというのでしょうか、落ち着いたトーンがとても耳に心地よい!
山田が次第に高天に惹かれていく様子、そんな中で高天を疑っているもどかしさもとてもよく表現されていると思います。
「この2人の話、もっともっと聞いていたい!!!!」
そう感じる、非常に心地よい空気感の物語でした。
これが30分なんて短すぎる……!!!!!
阿部敦さんの「控えめな受け」がこんなにオイシイとは。そして低音がとても心地よい新垣樽助さんのお声とこんなに相性が良いとは。
2人の絡みをもっと聞きたくて、
新垣樽助×阿部敦 作品はないかと探したのですが、残念ながらこの「明け方に止む雨」1作だけの様子です(2018年6月時点)
残念だわぁ……
そう思うくらい、とても良い空気感の「上質な大人向けBL」でした!
小粒ながら、良品に巡り合えた幸せを、ここで皆様にシェアさせていただきます♪
ハードなんだけど、そう感じさせない「大人」感の「明け方に止む雨」
刑事の結城と山田の同僚・里村の物語がCDのタイトルにもなっている「明け方に止む雨」です。
自殺した男の部屋を捜査していた結城は、男が兄を愛していたことを綴ったメモが残されているのを見つけます。
男の部屋にやってきた里村に、そのメモを見せることができない結城。
弟の死を受け入れられない里村は、自殺の理由を探るため、弟の手帳に残されていたゲイバーの店名リストに注目し、ゲイバーめぐりをすることに。もともとゲイだった結城はそんな里村に付き合って、毎晩一緒に二丁目の店を回るのですが……
渋い刑事の結城を川原慶久さんが、弟の死に打ちのめされる裁判所勤務の事務員を興津和幸さんが演じます。
もうね、大人の渋い低音2人組ですから、なんていうか非常にモスっぽい感じというのでしょうか………、
ヒューゴ・ボスみたいなね!
ポール・スミスでもバーバリーでもなくて、「渋い大人の男だけが持つ、独特の色気と品」みたいなのがバリバリ出ているんですよ!
こちらも濃厚なエロはありませんが、里村がかなり強引に「自分を抱け」と結城に迫るシーンがあって、こちらは必聴です。
そして、ずっと里村に弟が残したメモを見せることができなかった結城の心情や次第に里村に惹かれていく様子も「うわぁ……いいなあ、大人の男だわ………」という感じで………満足。大満足!!
「夜更けに花降る」「明け方に止む雨」、どちらも「しっとり」の意味が分かる、大人向けのBLです。
濃厚エロより「質の高い、余韻が残るBLを」と希望されている大人女子におすすめします!
(ライター 矢吹良子)
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